浅野・ブッチャー・祥之さん 名ギタリスト

ギターを弾く全ての人に

浅野祥之さんというギタリストをご存知ですか?

彼は2007年4月20日に48歳の若さで亡くなっている。
僕が浅野さんを知ったのは永井”ホトケ”隆、沼澤尚と組んだトリオ「THE BLUES POWER」のライブだった。
もちろんそれまでに名前は聞いた事があったし、角松敏生さんやSing Like Talkingのライブ映像なんかでも見た事はあった。
しかし、正直それほどギタリスト浅野祥之という存在を意識した事はなかった。

「THE BLUES POWER」は永井”ホトケ”隆、沼澤尚の名前につられて見に行った。
そのライブはギター2本とドラムに歌という編成でブルースをやるというもの。

「ベースがいなくて大丈夫なのか?」という最初の心配は全くの無用だった。
この編成のトリオだからこそ生み出せるグルーヴや遊び感がたまらなくカッコ良かった。

とげのある、磨いていない、気負わない、飾らない。
うまく表現できないが、ブルースが生まれたばかりの頃はこんな雰囲気だったのかなと思わせてくれるライブだった。

ライブが終わった後、エフェクターやシールドを片付ける浅野さんの元に行き、「握手して下さい」とお願いをした。
突然の男からのお願いにも浅野さんは嫌な顔一つせず笑顔で握手をしてくれた。

このライブでお目当ての永井”ホトケ”隆、沼澤尚の二人ももちろんすばらしかったが、浅野祥之というギタリストのすばらしさを体感できた事が本当に良かった。
どんなフレーズを弾いていたかまでは覚えていないが、チョーキングを決める時にピックを斜めに当てて割れたような音を出していた光景が頭に残っている。

その後「THE BLUES POWER」のライブは何度となく足を運んだ。
そんな「THE BLUES POWER」がCD「This Is The Blues Power」を出す事になった。
その発売日は2007年4月20日。
浅野祥之さんはその日に息を引き取ったのだ。

その出来事はとてもショックだった。
一オーディエンスでもこれだけショックを受けたのだから、バンドメンバーや家族のショックは相当なものだっただろう。

それでも浅野さんの意思を引き継いで永井”ホトケ”隆、沼澤尚を中心に「blues.the-butcher-590213」が結成され今もブルーススタイルのライブが続けられている。
僕は「This Is The Blues Power」のCDを持っていない。

何度も買おうとしたのだが、その度になぜか心の中で「まだ聞きたくない」という思いがわき上がってきた。
あの図太い音がスピーカーから聞こえてくる事は分かっている、とてもかっこいいということも分かっている。

もうすぐ4年経つ。
そろそろ聞いてもいいのかなと思うがやっぱり心の中に「まだ聞きたくない」という思いがある。

今年の4月20日にもう一度考えてみよう。
その時に「聞きたい!」と思えるように何をすればいいのか、どう過ごせばいいのか。
その答えは薄靄に包まれて僕の胸の中にある。

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