ハーモニクスの意味と弾き方を詳しく解説
ギターやベース、ヴァイオリン、チェロなど弦楽器には「ハーモニクス奏法」と呼ばれるテクニックがあります。
普通に楽器を弾いた音とは違う「ピーン」と張り詰めて澄んだ音が特徴で、楽曲でのアクセントや印象深いフレーズに使われています。
この記事ではハーモニクスの出し方からその原理、音の配列などをできるだけシンプルに解説していきます。
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ハーモニクスとは
私たちが普段聞いている楽器の音には「基音」と「倍音(ハーモニクス)」が含まれています。
ギターの3弦0フレット(開放)を弾くと「G(ソ)」の音が出るのですが、実はこの音には2倍、3倍と整数倍の周波数が含まれています。
早速あやしい雲行きになってきましたが安心してください、周波数という言葉はこれ以上使いません。
とにかく、楽器は普通に弾いただけで「基音」と「倍音」というものが出ており、この「倍音」だけを出すのがハーモニクス奏法です。
ギターのハーモニクス奏法の弾き方
ギターのハーモニクス奏法は「ナチュラル・ハーモニクス」と「ピッキング・ハーモニクス」という2つの奏法に分けることができます。
ナチュラル・ハーモニクス
ナチュラル・ハーモニクスは弦をぎゅっと押さえるのではなく、左手が弦に軽く触れた状態でピッキングすることで、ハーモニクスを出す奏法です。
左手が弦に触れる位置を変えることで、ハーモニクスの音程を変えることができるのですが、どこでもハーモニクスが出せる訳ではありません。
いちばんハーモニクスが出やすい場所は、12フレットの真上です。
図のように12フレットの真上に指を軽く起き、ピッキングをしてみましょう。
(左手の指はピッキング直後に弦から離します)
「ピーン」と真っ直ぐな音が出れば、それがハーモニクスです。
もし、「ポッ」という短い音しか出ないようであれば、弦を強く押しすぎているか、指が12フレットの真上からずれているかのどちらかになります。
ピッキング・ハーモニクス
もう一つのピッキング・ハーモニクスは、左手は普通に弦を押さえ、ピッキングと同時に右手の親指を弦に触れさせてハーモニクスサウンドを出します。
ピッキングと同時に親指を弦に触れさせるためには、ピックの先端と親指が同じ位置にくるよう、ピックを極端に短く持ちます。
ピッキング直後に親指で「基音」を消して、「倍音」だけを取り出します。
綺麗なピッキング・ハーモニクスを出すにはかなりコツが必要になってきます。
ナチュラル・ハーモニクスの原理
先ほど、12フレットの真上を軽く指で触れてピッキングすると、ナチュラル・ハーモニクスが出るとご紹介しました。
次に5フレットの真上でも同じようにハーモニクスを出してみましょう。
12フレットの時よりは難しいですが、左手をぴったりの場所と力加減で触れさせると、ここでも綺麗なナチュラル・ハーモニクスを出すことができます。
さて、この「ピーン」と綺麗なハーモニクスサウンドですが、実は全て同じ音なのです。
3弦を例にしてみると、
- 3弦0フレット(開放)=G
- 3弦12フレット(ハーモニクス)=G(1オクターブ上)
- 3弦5フレット(ハーモニクス)=G(2オクターブ上)
とオクターブ違いではありますが、同じ音になっています。
12フレットを押さえて弾くと0フレットの音より1オクターブ上の音が出るので、12フレットのハーモニクスが同じ音なのはイメージがつきやすいと思います。
しかし、5フレットを押さえて弾くと「C(ド)」の音が出るので、ここのハーモニクスが開放と同じ音というのはなんだか納得がいきませんよね?
それでは、少し角度を変えてこの謎に迫っていきましょう。
ここではまさかのメジャー(巻き尺)を使います。
ハーモニクスは弦の長さと深い関係にある
まず、ギターのナットからブリッジまでの距離をはかります。
手元にあった百均で買った高精度メジャーによると、65cmとなっています。
次にナットから12フレットまでの距離をはかります。
32.5cmです。
最後にナットから5フレットまでの距離をはかります。
16.25cmです。
無理やり数値を読み取った感はありますが、大体このくらいの距離感です。
さて、測定したこれらの数字を比べてみると見事に1/2の長さになっています。
弦長の半分でハーモニクスを出すと、開放弦の1オクターブ上、さらに半分でハーモニクスを出すとさらに1オクターブ上(開放弦の2オクターブ上)の音が出ました。
16.25cmのさらに半分の8.125cmの場所では、開放弦の3オクターブ上のハーモニクスを出せる計算になりますが、実際に出すこともできます。
(2フレットと3フレットの真ん中より、少し2フレットよりの場所になります)
※数値がわかりやすいよう大まかに計測しています。
一覧表で見てみると、ハーモニクスが出る場所はフレットではなく、弦長との比で決まっていることがわかります。
フレットの位置 | ナットからの距離 | 弦長との比 | ハーモニクスの音程 |
---|---|---|---|
0 | 65cm(弦長) | 1 | – |
12 | 32.5cm | 1/2 | 1オクターブ上 |
5 | 16.25cm | 1/4 | 2オクターブ上 |
2と3の間 | 8.125cm | 1/8 | 3オクターブ上 |
ハーモニクスポイント
ナチュラル・ハーモニクスが出せる場所のことを「ハーモニクス・ポイント」と呼びます。
先ほど見てきた場所は1/2や1/4、1/8など分母が2倍になっていました。
それでは、1/3のように2以外の数で区切った場所でもナチュラル・ハーモニクスは出るのでしょうか?
百均で買った高精度メジャーで測った弦長、65cmを3で割ると21.6666…cmとなります。
これは7フレットの位置とほぼ同じです。
実際に7フレットでハーモニクスを出してみると、見事に「ピーン」と綺麗なハーモニクスが出ました。
このハーモニクスの音程は開放弦の完全5度となり、3弦の場合「D(レ)」です。
次に1/5の場所でも試してみましょう。
65cmを5で割ると13cmで、ほぼ4フレットの上だとわかります。
ここでも「ピーン」と綺麗なハーモニクスが出ました。
音程は開放弦の長3度の音、3弦なら「B(シ)」です。
このように、ハーモニクスポイントは弦長を整数で割った位置に現れており、これは周波数と深い関係にあります。
周波数とは1秒間に繰り返される音の波のことで、Hz(ヘルツ)という単位で、、、
あ、冒頭で周波数という言葉をこれ以上使わないと約束したのに使ってしまいました。。。
これ以上詳しく説明するにはどうしてもこの言葉が必要になり、難しい話になってくるので、今回はここまでにしておきます。
周波数については、ヤマハさんのこちらのサイトで分かりやすく解説されています。
ハーモニクス一覧表
下の数字はフレット番号、上は開放弦の音に対する度数となっており、弦が変わってもこの関係は変わりません。
図に示したハーモニクスポイントは目安です。
自分の耳を頼りに正確な位置を割り出してみましょう。
また、この表には書かれていない#11や♭7といったハーモニクスも潜んでいるので、是非探し出してみてください!
ハーモニクスでチャイムを弾いてみよう
ギターでハーモニクスと言えば、学校のチャイムを弾いてみるのが定番です。
キー違いの2つのパターンでハーモニクスの練習をして、本日の授業を終わります。
ありがとうございました。