初めてのトレモロアームの使い方
エレキギターのブリッジ付近から伸びたバーは「トレモロアーム」や「アーム」と呼ばれ、操作するとギターの音程を上下させることができます。
この記事では、トレモロアームで出来ることや仕組み、練習フレーズ、アーミングが巧みなギタリストなどをご紹介しています。
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トレモロアームとは
アーム(ワーミー・バーとも呼ばれる)はただの金属製の棒なのでそれ単体では何もできないのですが、「トレモロユニット」と呼ばれるパーツに取り付けることで音程を変化させることができます。
なぜ音程が変化するの?
トレモロユニットの背面にはバネが取り付けられており、普段はバネと弦の張力のバランスでブリッジは一定の位置にとどまっています。
アームでトレモロユニットに力を加えることでバネが伸び縮みし、弦の張力が変わって音程が変化する仕組みになっています。
アームを操作するとトレモロユニットが動き、サドルの位置が変化します。
- アームを下げる方向に押すとブリッジ全体が前に移動し、音程が下がります
- 逆にアームを引き上げるとブリッジ全体が後ろに移動し、音程が上がります
アームは、てこの原理を使って効率よくバネに力を伝える入力装置の役割を果たしています。
何ができるの?
アームはトレモロユニットに力を加えて音程を上下させる装置で、アームを使った奏法を「アーミング」と呼びます。
音を細かく上下させてビブラートの効果を出したり、激しく音程を変えてフレーズに独特なニュアンスを与えるなど様々な使い道があります。
ビブラートとの違い
アーミングと同じく音程を変化させるテクニックに、「ビブラート」や「チョーキング」があります。
普通のビブラートやチョーキングは音程を上げる方向にしか変化させられませんが、アーミングでは音程を下げることができます。
アーミングの最大の特徴は「音程を下げることができる」という点です。
アームの種類
アームを構成するトレモロユニットには、大きく3つのタイプが存在しています
シンクロナイズド・タイプ
フェンダーのストラトキャスターに代表されるタイプで、もっとも一般的です。
ブリッジ部分からギターのボディー内部に向かって基礎が伸びており、ボディー裏面とバネで固定されています。
一般的にはブリッジ全体がボディー前面に密着した状態になっているのですが、バネの張りを変えることで少し浮かせた状態(フローティング)にすることも可能です。
フローティングの状態にすると音程を上げるアーミングも可能になるのですが、ギター全体の鳴りが変わったり、セッティング、チューニングなどにも影響が出てきます。
ただ、フローティング状態のギターの鳴りが好みということで、アーミングをほとんどしないのにフローティング状態にセッティングしているギタリストもいます。
フロイドローズ・タイプ
仕組みはシンクロナイズド・タイプと大まかには同じなのですが、「チューニングが狂いにくい」「大胆なアーミングが可能になる」といった利点があります。
フロイドローズ・タイプのギターは、サドル部分とナット部分が弦を挟み込む(ロックする)仕組みになっているため、別名「ロック式」などと呼ばれます。
また、トレモロユニットはボディーに取り付けられた2本の支柱と、ボディー背面のバネで支えられており、シンクロナイズド・タイプのようにギター本体とは直接接触していません。
フロイドローズ・タイプのトレモロユニットを取り付けるには、ギター本体に大きな窪み(ザクリ)が必要になるのですが、窪みがあるおかげで自由なアーミングが実現しています。
様々な利点があるシステムなのですが、チューニングが難しくなったり、取り付けに大きな加工が必要になります。
ビグスビー・タイプ
上記2つのタイプとの最大の違いは「ボディー前面だけで取り付けられる」という点です。
フェンダーのストラトキャスターは弦をボディーの背面から通しますが、ギブソンのレスポールは背面を通さずボディーの前面だけで弦を取り付けることができます
ビグスビーもボディー前面だけで取り付けができ、ボディーに大きな穴を開ける必要がないのでレスポールやセミアコ、フルアコといったギターにも取り付けることが可能です。
また、シンクロナイズド、フロイドローズ2つのタイプはトレモロユニット全体が動いていたのに対して、ビグスビー・タイプではテールピース部分だけが回転して音程が変化します。
サドルが動かないので、アーミング時のニュアンスも異なってきます。
アームの練習フレーズ
ここからはトレモロアームを使った練習フレーズをご紹介していきます。
シンクロナイズド、フロイドローズ、ビグスビーなど、どのタイプでも演奏できるようなフレーズです。
基本の練習
2弦の5フレットと6フレットを交互に弾くフレーズです。
・1〜4小節目は、音を弾いた後に2拍目、3拍目、4拍目のタイミングでアームダウンを入れています。
アームを右手の小指、薬指で持ち、ボディー側に押さえ込むようにし、戻るタイミングでは力を抜いてバネの反動を利用します。
(右手の指を伸ばしてアームを押さえ込むだけのスタイルでもOKです)
・5〜8小節目は、8分音符のタイミングでアームダウンを入れます。
それまでよりも倍の速さでアームを押さえ込みます。
・9小節目以降は、音を伸ばした後に素早くアームダウンを繰り返してビブラートをかけています。
実戦練習
アームの基本的な使い方が分かったところで、実際のフレーズでその使い方を覚えていきましょう。
A:アームダウンした状態で3弦9フレットをピッキングし、ピッキングと同時にアームを戻します。
戻すタイミングでは力を抜くだけで、バネの力を利用します。
B:A同様にアームダウンした状態でピッキングした後、アームでビブラートをかけています。
C:ハンマリングを交えたフレーズですが、ここでもピッキング前にアームダウンした状態になっています。
D:2弦10フレットを弾いた直後に一瞬のアームダウンを入れたフレージングです。
E:チョーキングした直後にアームダウンを入れることで、チョークダウンとチョーキングを繰り返したように聞こえます
全体的にシンプルなメロディーですが、アームを駆使することでギターにしか出せない独特なニュアンスになりました。
アームの使い方が参考になるギタリスト
スティーヴ・ヴァイ
冒頭の動画のギタリストです。
フロイドローズが搭載されたギターを駆使して、大胆なアーミングを聴かせてくれます。
アーミングを巧みに感情表現の道具として使っていることがわかります。
ジェフ・ベック
ストラトのアームを巧みに操り、独特なフレージングを披露しています。
多くのギタリストが「よし、アームを使うぞ」という意識でアーミングをしますが、彼は息をするように自然にアームを使っています。
ジョー・サトリアーニ
フロイドローズタイプのギターで、大胆なアーミングから繊細なアーミングまで披露してくれます。
アームなしでは表現できない、幅広い表現でギターの可能性を広げています。
デヴィッド・ギルモア
派手さはありませんが、彼のフレーズにはアーミングが欠かせない存在となっています。
マテウス・アサト
様々なタイプのギターを使いこなすギタリストですが、アーム付きのギターを使う場合は効果的にアームを使用しています。
ブライアン・セッツァー
アームの使用頻度は多くないですが、ビグスビータイプのトレモロアームを搭載したギターの名手と言えばこの人です。
アームはギターの表現力の幅を一気に拡げてくれるアイテムです。
せっかくついているのに使わないのはもったいないので、是非マスターしていきましょう。