ピックアップの仕組みと種類、使い分けの方法
エレキギターのあのサウンドは、「ピックアップ」が無いと出せません。
エレキギターの最重要パーツであるピックアップですが、その仕組みや種類、使い方など意外と知られていないこともたくさんあります。
この記事では、ピックアップについて、初心者の方でもわかりやすいように詳しく解説していきます。
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ピックアップの仕組み
ここではピックアップの基本的な役割や仕組みを見ていきましょう。
ピックアップの役割
ピックアップは、ギターの弦の振動を電気信号に変換する装置です。
変換された電気信号はシールドケーブルを経由し、アンプを通して音として出力されます。
ピックアップが無ければ、エレキギターの音をアンプから出すことはできません。
ピックアップの基本構造
ピックアップは、電気信号を生み出すために、主に以下のパーツで構成されています。
磁石
ピックアップの中心には磁石が配置されており、弦と磁石の間に磁場を形成します。
上の写真で、ピックアップの中心に配置された6つの丸い金属が磁石です。
コイル(銅線)
多くのピックアップは、プラスチックのカバーで覆われており中を見ることができませんが、磁石の周りには、細い銅線がグルグルと何千回も巻かれています。
この銅線がグルグルと巻かれた部分をコイルと呼びます。
ピックアップが音を生み出す仕組み
当然ですが、ピックアップだけでは音を出すことができません。
そこに弦があって、さらに弦が振動する必要があります。
ピックアップに搭載されている磁石は、磁場を作っており、金属製の弦が振動することでその磁場が乱れます。
コイルを伴ったピックアップは、その乱れを電流に変える働きをしており、この現象は電磁誘導と呼ばれています。
電磁誘導の詳しい解説はこちらの動画を参照してください。
動画の中では磁石やコイルを動かしていますが、ギターの場合は弦を動かして電磁誘導を引き起こしています。
エレキギターの音が出る流れを詳しく見ると、次のようになります。
- 弦の振動により磁石が作り出す磁場が乱れ、コイルの周りで電磁誘導を引き起こす。
- 電磁誘導によってコイル内に電流が発生し、この電流が電気信号としてピックアップから出力される。
- 電気信号はシールドケーブルを通じてアンプに送られ、アンプによって増幅された後、スピーカーから音として出力される。
ピックアップの種類
ギターのピックアップは、その形状や構造によっていくつかの種類に分類されます。
シングルコイルとは
シングルコイル・ピックアップは、その名の通り、一つのコイルで構成されたピックアップです。
明るくクリアな音が特徴で、特にクリーンな音や軽い歪みの音楽に使われます。(激しく歪まして使うこともあります)
フェンダーのストラトキャスターやテレキャスターなどのギターによく見られます。
しかし、シングルコイルピックアップはノイズに敏感なため、特に高いゲイン設定で使用する際にはハム(電磁干渉によるノイズ)が発生しやすいという欠点があります。
ハムバッキングとは
ハムバッキング・ピックアップは、二つのコイルを逆向きに設置することで、互いのノイズを打ち消し合うように設計されています。
この「ハムをバックする(ノイズキャンセリング)」機能により、ハムバッキングピックアップはシングルコイルピックアップよりもノイズが少なく、より太く、高音域のギラつきが少ない、温かみのある音が特徴です。
このタイプのピックアップは、ギブソンのレスポールなどのギターで使用されます。
ロック、ヘビーメタルなど、激しく歪んだギターサウンドが特徴的な音楽だけでなく、ジャズやブルースのような歪みの少ない音楽にも使用されます。
ピエゾピックアップとは
主にアコースティックギターで使用されるピックアップで、非常にナチュラルでリアルな音を再現することができます。
ノイズやハウリングにも強く、ライブやバンドサウンドの中でアコースティックギターを使う場合には、その利点を最大限発揮してくれます。
ピエゾピックアップ自体は、1mmもないほど薄い板状のもので、ブリッジのサドルの下に敷かれています。
この薄い特殊な板が、物理的な圧力(この場合は弦やギター本体の振動)を受けると電圧を発生させる特性を利用して、弦の振動を電気信号に変換しています。
音を出す仕組みとしては、他のピックアップのような電磁誘導ではなく、圧電効果と呼ばれる原理を利用しています。
※動画内で「Fishman」と紹介されている方がピエゾピックアップです
パッシブタイプ、アクティブタイプとは
ピックアップは、パッシブタイプとアクティブタイプのふたつの種類に分けられます。
パッシブピックアップは磁石とコイルだけの、シンプルな構造が特徴です。
ここまでにご紹介してきた、一般的なストラトやテレキャスター、レスポールに搭載されているピックアップがこれに該当します。
一方のアクティブピックアップは、電源(ほとんどが電池)を使用して内蔵されたプリアンプを動かし、高い出力レベルと低ノイズを実現しています。
その特性を活かして、激しく歪んだギターサウンドが特徴のメタルなどでよく利用されています。
(ピックアップから出る電気信号にノイズが少ないため、アンプを激しく歪ましてもノイズが目立たない)
EMG、SEYMOUR DUNCANといったピックアップメーカーが代表的です。
ピックアップポジションの選び方
一般的なストラトキャスターには3つ、レスポールには2つのピックアップが搭載されていますが、それぞれ役割や音に違いがあります。
ピックアップの位置
ブリッジ側のピックアップは「リアピックアップ」、ネック側のピックアップは「フロントピックアップ」、その中間のピックアップは「センターピックアップ」と呼ばれています。
同じピックアップでも、取り付けられた位置によって音が大きく変わるため、ギタリストは自分の出したい音に合わせてリア、センター、フロントの各ピックアップを切り替えながら演奏しています。
ピックアップセレクターとは
ピックアップセレクターは、アクティブ(有効)なピックアップを切り替えるためのスイッチです。
このスイッチのおかげで、ギタリストは演奏中であっても手元だけで瞬時に音色を変更することができます。
ストラトキャスターのように3つのピックアップが搭載されたギターには、ピックアップポジションを5段階で変更できる5wayセレクターが搭載されています。
5wayセレクターをブリッジ側から1段階ずつ動かすと、次のような順番で各ピックアップが機能します。
- リア
- リア+センター
- センター
- センター+フロント
- フロント
リア+センターのように2つのピックアップの音が混ざるポジションは、ミックスポジションとも呼ばれています。
また、レスポールのように2つのピックアップが搭載されたギターには、3段階で変更できる3wayセレクターが搭載されており、RHYTHM(リズム)、TREBLE(トレブル)と書かれている場合があります。
RHYTHMはフロント、TREBLEがリアのピックアップを指しており、セレクターを切り替えると次のような順番で機能します。
- リア
- リア+フロント
- フロント
ピックアップポジションによる音の違い
ピックアップのポジションを変更すると、ギターの音色は大きく変化します。
- リア:最もブライトで攻撃的な音が特徴
- リア+センター:ブリッジの明るさとミドルの暖かさが混ざり合う
- センター:バランスの取れた音色
- センター+フロント:フロントの暖かさとミドルの明るさが融合した柔らかい音色
- フロント:最もウォームで太い音色
次の動画では、それぞれの音色の違いを、ソロ、コード、リフ、カッティングで弾き比べてみました。
ピックアップポジションの使い分け方
ピックアップポジションの使い分けは、演奏する曲のジャンルや求める音色によって決まってきます。
例えば、カントリーミュージックやロックを演奏する際には、リアピックアップを使用して明るく攻撃的な音を出すことが一般的です。
一方、ジャズやブルースでは、フロントピックアップを使用してウォームで豊かな音色を得ることが多くなります。
また、曲の中でリズムパートとリードパートを切り替える場合には、ピックアップセレクターを活用して音色にメリハリをつけることがよくあります。
さらに、同じカッティングのフレーズを弾いていても、イントロではフロントを使ってより目立たせ、歌のバックになるとミックスポジションにして一歩下がったサウンドにするなど、ギター単体の音色だけでなくバンドサウンドとの兼ね合いによって使い分ける場合もあります。
ここでは、ピックアップポジションごとに、どのような奏法に使われる頻度が多いかを、ストラトの場合を例に高、中、低の3段階で一覧表にしてみました。
パワーコード | 歪みストローク | クリーンストローク | クリーンアルペジオ | カッティング | ギターソロ | |
---|---|---|---|---|---|---|
フロント | 低 | 低 | 高 | 高 | 高 | 高 |
フロント+センター | 低 | 低 | 中 | 高 | 高 | 低 |
センター | 低 | 低 | 中 | 中 | 中 | 低 |
センター+リア | 低 | 中 | 低 | 中 | 高 | 低 |
リア | 高 | 高 | 低 | 低 | 低 | 高 |
※低いとされた使い方でも、実際の演奏で活躍するシーンはあります
ピックアップの調整
ギターのピックアップ調整は、作業自体はとてもシンプルですが、その効果は意外と大きく、ベストなセッティングにするためにはある程度の経験が必要です。
調整の方法
ピックアップの調整と言っても、そのほとんどは高さを変更するだけになりますが、ピックアップの位置が高すぎる(弦に近すぎる)と音が歪んだり、サスティンが短くなるなどの弊害が出てきます。
一方で、ピックアップの位置が低すぎる(弦から遠すぎる)と、音量が下がり、音の輪郭がぼやけるなどの弊害があります。
調整を行う際には、ピックアップの両側にある調整ネジを利用します。
ストラトの場合、時計回りに回すとピックアップは上がり、反時計回りに回すと下がります。
1つのピックアップを調整した後、他のピックアップと比較して、音量のバランスを整えます。
一般的には、ポールピースと弦の距離は、最終フレットを押さえた状態で2〜3mmが基準とされていますが、実際は音を出しながら耳を頼りに調整していくことになります。
(6弦側と比べて、1弦側のほうを弦に近くセッティングすることが一般的です)
自分で調整する場合は、少しずつ慎重に調整を行い、音の変化に細心の注意を払いながら、6弦側と1弦側のバランス、各ピックアップ間の音量バランスなどに注意しながら進めてください。
ピックアップの交換
ギターの音をガラッと変えたいなら、ピックアップを交換することも有効な方法です。
よりパワー感のあるタイプ、ヴィンテージ感のあるタイプなど、ピックアップにはそれぞれ特性があるため、自分が出したい音が明確で、今のギターの音に物足りなさがある場合には検討してみましょう。
ピックアップの交換は、ギター内部の配線を繋ぎ変えるため、電気的な知識はもちろん、はんだごてなどの工具の操作にも慣れておく必要があります。
自信がない場合は、楽器店や専門のリペアショップに依頼することをおすすめします。
ただ、ピックアップの交換が狙い通りのサウンドの変化をもたらしてくれるかは、ギターとの相性の問題もあるため交換してみるまで分かりません。
交換してみて、「思っていたのと違う…」となると、戻すにも大変な労力が必要になります。
交換する前は、入念なリサーチを欠かさないようにしましょう。
以上、ピックアップの基礎知識とその使い方でした。