速いフレーズがきれいに弾けない原因と、正解を知るための練習法
自分の演奏を録音して聞き返してみたら、速いフレーズのところだけ音がプツプツと切れていた。
弾いているときは、それなりに弾けているつもりだったのに…
そんな経験はないでしょうか?
速いフレーズがうまく弾けないとき、多くの方は「もっと指を速く動かさなければ」と考えます。ただ、レッスンの現場で見ていると、本当に必要なのはその手前の段階であることがほとんどです。
この記事では、速いフレーズになると音が濁ってしまう方に向けて、右手と左手のタイミングをそろえるための考え方と、BPM60から始める具体的な練習方法をご紹介しています。
弾けていないときの音
まず、速いフレーズが弾けていないとき、音がどうなっているかを整理しておきましょう。
レッスンで生徒さんの演奏を聞いていて「これはちゃんと弾けていないな」と感じるのは、次のような状態のときです。
- 音がきれいにつながらない
- プツプツと切れた感じがある
- 音が出ていないところがある
そして、ここが一番やっかいなところなのですが、弾いている本人がそのことに気づけていないケースがとても多いです。
ご本人はある程度できているつもりで弾いていても、こちらが聞くと音が切れている。
速いフレーズになるほど、この差は大きくなります。
まずは、自分の音が実際にどうなっているのかを知ること。ここが出発点になります。
原因は分からなくて大丈夫
速いフレーズの解説では「右手のピッキングが追いついていない」「左手の運指が遅れている」というように、原因を分けて説明されることが多いですよね。
これはこれで正しい整理です。
実際、原因としては次のようなものが考えられます。
- 右手と左手のタイミングが合っていない
- 左手の運指が追いついていない
- 右手のピッキングが追いついていない
ただ、現場で実際に音を聞いていると、右手と左手のどちらが先行しているのかを特定するのは、正直かなり難しいです。
ズレはごくわずかですし、多くの場合これらが複合的に重なっています。
そして、何が原因で弾けないのかを自分で見極められる方はかなりの上級者で、それが分からないからこそレッスンを受けにいらっしゃる、と言ってもいいくらいかも知れません。
ですので、順番を逆にしましょう。
原因を探すことから始めるのではなく、まず「きれいに弾けている状態」がどういうものなのかを体で知る。
こちらから始めたほうが、はるかに近道です。
左右のタイミングはメトロノームに合わせる
「右手と左手のタイミングを合わせましょう」という話はよく出てきて、とても大切です。
ただ、レッスンでお伝えしているのは、少し違う言い方です。
左右を直接合わせにいくのではない
メトロノームを鳴らして、そのリズムに対して左手をピタッと合わせる。
そして右手も、そのリズムに対してピタッと合わせる。
左右を合わせるというより、真ん中にメトロノームという芯があって、そこへ左手と右手の両方を合わせにいくイメージです。

こうすることでテンポ感そのものが良くなり、結果として左右のタイミングも合ってくる、という感覚になります。
大勢で踊るダンスに似ています。
隣の人の動きを見ながら踊っていても、なかなかそろわないですよね。
一人ひとりが自分の動きをきちんと覚えて、流れている音楽に合わせる。
そうすると、結果として全体の動きがそろいます。
ギターの右手と左手も、これと同じです。
BPM60のクロマチック練習で「合っている」を体感
合わせるために大切なのは、「合っている状態」を知るための練習です。
とてもシンプルなものをご紹介します。
- メトロノームをBPM60に設定します
- 6弦5フレットから、人差し指・中指・薬指・小指の順に1音ずつ弾きます
- ポジション移動はしません。同じ4フレット分の中だけで弾きます
- 4分音符で、1拍に1音。メトロノームの音1回につき1音です

これだけ?
と思われたでしょうか。
とても単純ですし、誰にでもできそうに見えます。
でも実際にやってみると、意外とピタッと合わないのです。
弦を押さえるタイミングと、弦を弾くタイミング。
この2つがわずかにずれるだけで、音の立ち上がりがぼやけます。
合っていないときは、音の頭がにじんだように聞こえます。
逆にピタッと合ったときは、音の頭が前に出てくる感覚があります。
そして、メトロノームの音と自分の音が、一つの音に聞こえる瞬間があります。
この感覚を知ることが、この練習の目的です。
ちなみにこのクロマチックトレーニングは、ウォームアップとして毎日弾いている方も多いと思います。
ただ、指を動かすためにやるのと、合っているかを聴くためにやるのとでは、まったく別の練習になります。
運指は同じでも、耳を向ける先が違うのです。
まずは4分音符で、確実に合う状態を作りましょう。
慣れてきたら8分音符にしてみます。1拍に2音ずつ入れる形です。
速く弾くための練習ではありません。「左右のタイミングが合っているとはどういうことか」を理解するための練習です。
まずは正解を知る。
ここがすべての土台になります。
私が昔この練習を始めてやった時「正しい音はこれか!」と、とても感動したことを今でも覚えています。
「左右のタイミングが合う」ということを感覚的に理解できたことは、とても大きな成長だったと今でも鮮明に覚えています。
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テンポを上げると、必ずどこかで壁が出てきます
正解の感覚がつかめたら、テンポを上げていきましょう。
やり方はシンプルです。
確実に弾けるテンポで、確実に弾ける短いフレーズから始めます。
フレーズは1小節でも構いません。1拍、2拍だけ取り出しても構いません。
それをゆっくり弾いて、少しずつテンポを上げていきます。
そうすると、どこかで必ずつまずくポイントが出てきます。
これは技術が足りないという話ではありません。
体の使い方が切り替わるポイントに来た、ということです。
人間の体は、ゆっくり動かすときと速く動かすときとで、筋肉の使い方が変わります。
ある一定のスピードを超えてくると、普段どんなに脱力して弾いている方でも、少し力をかけなくてはいけない場面が出てきます。
腕の使い方やピックの角度を変えたほうが速く弾ける、ということもあります。
そして、この壁が出てくるテンポは人によって違います。
- 同じフレーズでも、テンポ100の16分音符で壁を感じる方がいます
- テンポ120まで何ともない方もいます
- さらに上げていくと、その先でまた別の壁が出てきます
つまり、壁は一つではなく、人によって何層もあるものだと考えてください。
だからこそ、ゆっくりから少しずつ上げていくことに意味があります。
「あ、ここが切り替わるポイントだな」と自分で気づけるからです。
いきなり速いテンポで弾いていると、この境目が見えません。
壁を越えるための3つの調整
壁にぶつかったとき、レッスンでよくお伝えしている調整をご紹介します。
1. ピッキングを小さくする
それまで大きく振っていたピッキングを、小さな動きに変えます。
振り幅が大きいままだと、どこかで必ず限界が来ます。
2. 左手は逆に、力みを抜く
速くしようとすると、左手にも無意識に力が入ります。
ところが力が入ったままだと、指はそれ以上動きません。
指を置く位置にも意識を向けて、フレットのすぐ横に指を置けていれば、指先に力はほとんど要らないはずです。
右手は少し力をかける場面が出てくるのに、左手は逆に抜くという意識を大切にしましょう。
3. ピックを浅く当てる
ピックが深く当たっていると、弦とピックの間の抵抗が大きくなります。
当然、速く弾くのは難しくなります。
「もう少し浅く当てましょう」は、レッスンでよく出すアドバイスの一つです。
なお、ピックの持ち方については、「こう持てば速く弾ける」という決まった正解はありません。
手の大きさも、普段の癖も人それぞれです。
レッスンでも、いくつか試していただきながら、その方にとってのベストな形を一緒に探していく形になります。
ネットで見つけた持ち方が自分に合わなくても、気にしなくて大丈夫です。
いつテンポを上げていいの?
「どうなったらテンポを上げていいのですか?」というご質問をよくいただきます。
最終的には、ご自身の体感ですが、自分の中にある正解に対して「弾けた」という感覚があれば上げていきましょう。
「何回連続で弾けたら」というように数値化できるとわかりやすいのですが、正直これは難しいところです。
フレーズによっても、その方の状態によっても変わります。
上げ幅については、そのときのテンポによって変わってきます。
- ゆっくりの段階では、5bpmずつ上げていって問題ありません
- かなりテンポが上がってきた段階では、2bpmずつなど細かく刻みます
上のテンポほど、1bpmの差が大きく感じられます。細かく刻んだほうが、壁を越えやすくなります。
効果の出ない練習
多くの方がやってしまう練習についても触れておきます。
それは、むやみに速く弾くことです。
気持ちはよくわかります。
速く弾けるようになりたいのですから、速く弾いて練習したくなりますよね。
ただ、弾けないテンポで繰り返しても、弾けない弾き方のほうが身についてしまいます。
まずは無理なくできるテンポから始めて、自分の限界がどこにあるのかを知る。
そして、それをほんの少しずつ上げていく。
地道ですが、これ以外に道はありません。
一人で練習するなら、録音・録画は欠かせません
弾きながらでは自分の音が実際にどうなっているのか、判断するのはとても難しいことです。
一人で練習される方が自分の演奏に気づくためには、録音や録画をして客観的に聴くしかありません。
これが何より大切です。
THE POCKETの無料アプリ「THE POCKET Guitar」(iPhone/iPad/Mac対応)にも、メトロノームと録音・録画の機能が入っています。
このメトロノームには自動テンポアップ機能があります。たとえばBPM60から始めて、4小節ごとにテンポを上げていく、といった設定ができます。
この記事でお伝えしてきた「少しずつテンポを上げて、壁がどこにあるかを知る」という作業と、そのまま相性のいい機能です。
録音しておけば、どのテンポから音が濁り始めたのかも後から確認できます。
まとめ:正解を知るところから
速いフレーズの練習でいちばんむずかしいのは、指を速く動かすことではありません。
「何が正解なのか」を自分で判断することです。
- 正解の音を弾くとどう感じるか
- どうなったらテンポを上げていいのか
- どういう風に弾けている状態を目指しているのか
これらがわからないままテンポだけ上げても、なかなか変わりません。
まずはBPM60のクロマチックで、メトロノームと自分の音と感覚が一つになる瞬間を探してみましょう。
レッスンでは、ここをこちらが何度もお伝えしながら並走していきます。
2小節のフレーズのうち、たった2拍分だけでもきれいに弾けたとします。
それでも、ご本人が「あ、確かに音が違う」と実感できれば、そこから伸びていく余地が生まれます。
その2拍を作るところまでは、誰かに聴いてもらったほうが早いかも知れません。
ご自身の演奏を聴かせていただいて、いまどこに壁があるのかを一緒に見つけるところから始めてみませんか。




