ギターの奏法を一流ギタリストの演奏で学ぼう
ギターは左手で弦を押さえて、右手に持ったピックで弦を弾くのが基本ですが、先人たちはそれに飽き足らず様々な奏法を編み出してきました。
今回は、そんな先人たちが編み出し受け継がれてきたギターの奏法を、一流ギタリストたちの演奏で振り返ってみましょう。
オンライン専門のギタースクール
当サイトを運営するTHE POCKETは開校14年、日本で最初のオンライン専門ギタースクールです。
プロの講師陣によるマンツーマンレッスンだから、あなたのペースで確実に上達できます
基本的な奏法
奏法というには一般的すぎますが、ギターには欠かせない重要なものをいくつかご紹介します。
これらの奏法がなければ、ギターの表現の幅が半分くらいに狭まってしまうと言ってもいいくらい重要なものばかりです。
ハンマリング・オン
左手を弦に叩きつけて音を出す奏法で、ピッキングをしないため音が滑らかにつながります。
Red Hot Chili Peppers / Can’t Stop
イントロの「タラ〜 タラ〜 タラ〜 タラ〜 」の部分は「タ」をピッキング、直後にハンマリングして「ラ〜」の音を出しています。
プリング・オフ
押弦していた指を離すときに、指先で弦を引っ掛けることで音を出す奏法。
ハンマリング・オンと同じく、ピッキングをしないため音が滑らかにつながります。
Eric Clapton / Layla
エリック・クラプトンによるおなじみのリフですが、ハンマリングとプリングを組み合わせたフレーズになっています。
「タラ タララタタ〜」のタララの部分でハンマリングとプリングが連続して使われています。
チョーキング
左手で押さえた弦をそのまま横方向に押し曲げることで、音程を上げる奏法。
英語ではベンド(bend=曲げる)と呼ばれています。
Gary Moore / Parsienne Walkways
メロディーの第1音目が強烈なチョーキングから始まっています。
ビブラート
原理的には細かなチョーキングを繰り返すことで音程を上下させ、伸ばした音に揺らぎを与える奏法。
B. B. King / The Thrill Is Gone
音を伸ばす場面で左手を大きく揺らし、揺れ幅の大きなビブラートを聴かせてくれます。
ブリッジミュート
右手の小指の付け根あたりの肉厚になっている部分を、ギターのブリッジ付近に触れさせることで弦をミュートする奏法です。
ロックギターのズンズン響く低音のフレーズには欠かせないテクニック。
Mr Big / Daddy Brother Lover Little Boy
ポール・ギルバートによる正確無比なピッキングで演奏されるこの曲のギターはブリッジミュートが多用されており、出だしのリフの中でブリッジミュートありとなしの部分の音の違いが明確になっています。
フィンガーピッキング
ピックを使わずに右手の指を使って弾く奏法で、ピック弾きに対して指弾きとも呼ばれます。
John Mayer / Neon
フィンガーピッキングでグルーヴ感あふれるリフが演奏されています。
親指と人差し指などを同時に使うことで、ピック弾きでは再現できないフレーズとなっています。
特殊な奏法
ここからは少し特殊で、奏法という呼び名にふさわしいテクニックです。
速弾き
めちゃくちゃざっくりとした名前ですが、その名の通り速く弾く奏法です。
高速でピッキングしたり、ハンマリングやプリングのテクニックを織り交ぜるなど様々な方法があります。
Yngwie Malmsteen / Live with Japanese Philharmonic Orchestra
速弾きといえばこの人、イングヴェイ・マルムスティーンの演奏です。
もはや速すぎてよくわかりません。
ライトハンド奏法
右手の人差し指や中指を使って音を出す奏法です。
やっていることは、左手のハンマリングやタッピングと同じく指を弦に叩きつける、離すときに弦を引っ掛けて音を出すなのですが、左手だけでは出せない幅広いフレージングが可能になります。
Van Halen / Eruption
ライトハンド奏法はエドワード・ヴァン・ヘイレンが世に広めたテクニックですが、惜しくも2020年に亡くなり世界中のギタリストが哀悼の意を送りました。
ライトハンド奏法の弾き方はこちらの記事で解説しています。
ライトハンド奏法とは、右手の指で弦をタップ(叩く)して音を出すギターのテクニックで、「タッピング」とも呼ばれます。 ライトハンド奏法(タッピング)を世に広めた元祖は、アメリカのハードロックバンド「ヴァン・ヘイレン」のギタリスト「エドワード・ヴァン・ヘイレン」と言われており、彼らのデビューアルバムの...
タッピング
右手を弦に叩きつけるという意味ではライトハンド奏法と同じものですが、エドワード・ヴァン・ヘイレンが広めたライトハンド奏法とは異なる使い方もたくさん編み出されているので別枠でご紹介します。
押尾コータロー / 戦場のメリークリスマス
この曲ではタッピングでハーモニクスを出す「タッピング・ハーモニクス」もみられます。
また、メロディーやベースラインを弾くためにもタッピングが使用されています。
スウィープ奏法
速いフレーズを弾くときのピッキングは、ダウンとアップを交互に繰り返すオルタネイトピッキングが基本となりますが、スウィープ奏法では1回のダウンピッキングで複数の弦を一気に弾きます。(逆にアップピッキングでのスウィープもあります)
そのピックの動きがホウキで掃く動作に似ていることからsweep(スウィープ=掃く)奏法と名付けられました。
Frank Gambale
ジャズ・フュージョン系ギタリスト、フランク・ギャンバレの正確無比なスウィープ奏法が、手元をアップにした貴重な映像で見ることができます。
動画の後半では最高に贅沢なカメラアングルと共に、フランク本人がスウィープにハーモニクスを加える奏法の解説を行なっています。
The Derek Trucks Band / I’d Rather Be Blind
ボトルネック奏法(スライド奏法)
左手の小指や薬指にはめたガラスや鉄製の筒(ボトルネック)を弦に触れさせることで、滑らかで独特なサウンドを生み出す奏法。
ブルースの世界では昔から愛用されてきました。
ボトルネック奏法の名手として知られるデレク・トラックスによる演奏。
普通に弾いても絶対に得られない、ボトルネックならではのフレージングと爆発力のあるサウンドが魅力です。
スラップ奏法
もともとはベースで使われていた奏法ですが、右手の親指や人差し指で弦を叩いたり引っ掛けるなどして、アタック感の強いサウンドを出す奏法です。
MIYAVI / WHAT’S MY NAME?
冒頭のリフからオリジナリティあふれる奏法で、スラップならではのグルーヴィーな演奏が繰り広げられています。
アーミング
ギターのブリッジ部分に取り付けられたアームを操作して音程に変化を加える奏法です。
ブリッジの構造上、普通のレスポールやテレキャスターなどにはアームがついていないので、アーミングをする場合はストラトキャスターなどアーム付きのギターが必要です。
Steve Vai / For The Love Of God
激しいアーミングでメロディーを多彩に彩っています。
音程を下げるアームダウンや、音程を上げるアームアップなどアーミングでしか出せないサウンドを聴くことができます。
ボリューム奏法(ヴァイオリン奏法)
ピッキングの瞬間にはボリュームを絞っておき、ピッキング直後にボリュームを上げることでアタック感のないサウンドを得る奏法で、その音がヴァイオリンのようにも聞こえるためヴァイオリン奏法とも呼ばれています。
Jeff Beck / Cause We’ve Ended As Lovers
ジェフ・ベックの代表曲、Cause We’ve Ended As Loversの冒頭のメロディーで使用されています。
ここではアーミングとの組み合わせでとても繊細なサウンドが生み出されています。
オクターブ奏法
1オクターブ違いの音を同時に鳴らすことで、サウンドに厚みをつける奏法。
2本の弦を同時に押さえたままメロディーを弾くため、手の移動が激しくなり正確な左手のコントロールが求められます。
George Benson / Breezin’
ジョージ・ベンソンの代表曲、Breezin’のギターソロではオクターブ奏法がふんだんに使われています。
ジャズやジャズ・フュージョン系のギタリストが特に好んで使う奏法です。
オクターブ奏法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
オクターブ奏法とは、1オクターブ離れた2つの音を同時に弾く奏法のことで、1つの音だけで弾くよりも音に厚みが増すので、ギターソロはもちろんメロディーやバッキングなど様々な場面で使用される、ギターには欠かせないテクニックのひとつです。 オクターブ奏法のポイント オクターブ奏法は、...
スラム奏法
主にアコースティクギターで使われ、近年急速に発展している奏法です。
ギターのボディーや弦を右手の親指や掌で叩くことで、打楽器のようなサウンドを出す奏法です。
ギター1本で多彩な表現が可能になります。
Petteri Sariola – San Francisco Drive
スラム奏法の生みの親とされるペッテリ・サリオラの楽曲で、冒頭からスラム奏法ならではのパーカッシブでグルーヴ感に溢れた演奏になっています。
まとめ
ギターの様々な奏法を見てきましたが、ギターってすごく奥深くて、まだまだ多くの可能性を持った楽器だなと改めて実感できました。
そして今回ご紹介したすべての楽曲に共通していたのは、奏法やテクニックは楽曲を表現するためにあるもので、奏法やテクニックは表現の手段に過ぎないということでした。
「楽曲をより良く聞かせたいから、このテクニックを使おう」
「こんなことを音楽で表現したいから、この奏法を使おう」
この順序が逆になると音楽としての魅力が半減してしまい、せっかくの奏法やテクニックも聞くひとの心を揺さぶることはできなくなるでしょう。
音楽でこんなことを表現したい、ギターで音楽の可能性を広げたい、そんな人々の想いが今後も新しい奏法を生み出してくれることでしょう。
今後のギター奏法の発展にも目が離せません。
ギターの奏法など基本から知りたい方は、このサイトを運営するTHE POCKETのオンラインギターレッスンもおすすめです。